CO2排出ゼロ。究極の環境性能を実現した燃料電池自動車、ホンダ・クラリティ FUEL CELL

みなさん、こんにちは!今回はホンダの燃料電池自動車、ホンダ・クラリティ FUEL CELLをご紹介します。「CO2排出ゼロ」という夢のような環境性能を持つ燃料電池自動車は、一方で技術的な問題やインフラ整備の問題に阻まれて、なかなか実用化には至りませんでした。

2014年にトヨタが世界初のセダン型燃料電池自動車「MIRAI」を発売。それに遅れること1年4ヶ月の2016年3月、ホンダからついにクラリティ FUEL CELLがデビューします。今回はクラリティ FUEL CELLの魅力と、クラリティ FUEL CELLの抱える「特殊な事情」についてもご紹介していきます。

燃料電池自動車から出るのは水だけ

燃料電池自動車は、FCVの略称で呼ばれる次世代エネルギー自動車の一種です。燃料電池自動車はガソリンタンクの代わりに水素タンクを備えていますが、ガソリンエンジンとは違い、水素を燃焼させて動力にしているわけではありません。燃料電池という装置の中で、タンクの中の水素と空気の中の酸素を化学反応させて発電し、発電した電気を使ってモーターを駆動する、大別すれば電気自動車の一種、ということになります。

電気自動車で問題になりがちな航続距離についても、燃料電池自動車の場合は水素タンクの大きさで走れる距離が決まります。クラリティ FUEL CELLの航続距離は750kmと、ほぼガソリンエンジン車と変わらない数値を実現しているのがポイント。水素の補給ステーションさえ充実すれば、実用には問題のない航続距離をすでに達成しているのです。

走るために必要な水素は、水を電気分解して作ります。電気分解するための電力を、例えば水力発電、太陽光発電、地熱発電、風力発電などの自然エネルギーでまかなえば、水素を作り出す際に石炭、石油などの化石燃料を使用せず、CO2を排出することもありません。

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水素タンクに蓄えられた水素は、燃料電池スタックと呼ばれる装置内で化学反応後、排出されるのはなんと「水」だけ。燃料電池自動車を走らせる場合、水素の調達からクルマの走行時まで、一切のCO2や排出ガスを出さずに済む…これが、燃料電池自動車が「夢のクリーンエネルギー自動車」と呼ばれる所以です。

ホンダでは、燃料電池自動車の研究を1980年代後半から行ってきました。2002年には「FCX」、2008年には「クラリティFCX」といった車種をリース販売で実際に路上で走らせ、公道上で使用する際の問題点などを収集・研究を行いました。こうしたデータの蓄積をもとに、ホンダ初の量産型燃料電池自動車として、トヨタ・MIRAIに遅れること1年4ヶ月後の2016年3月に「クラリティ FUEL CELL」がデビュー。水素ステーションの補給システムの共通化により、水素ステーションのさらなる普及をトヨタと協力して行っています。

クラリティ FUEL CELLはその後、クラリティシリーズとして、電気自動車(EV)の「クラリティ エレクトリック」(日本未発売)、プラグインハイブリッド車の「クラリティ PHEV」(2018年日本発売)を発表。同一プラットフォームで、3種類の電気自動車が揃う世界最初のクルマとなりました。

燃料電池スタックの小型化が生んだ、広い室内空間

クラリティ FUEL CELLは、ガソリンエンジン車で言えばFF、ということになります。トランクスペースを犠牲にするように70MPaの圧縮水素タンクを2本リアに搭載し、床下には発進時や加速時の大電力をサポートするリチウムイオンバッテリーを配置。燃料電池スタックを従来型に比べて33パーセント小型化することで、フロントボンネット内に燃料電池スタックとモーター、コンプレッサーなどの機器を一体化して納めることに成功しています。これらのパワーユニット全体の大きさは、ホンダの3.5リッターV型6気筒エンジンと同等の大きさにに収まりました。

燃料電池スタックに関しては小型化が難しく、以前は床下に配置していたため乗車定員は長らく「4名」でしたが、クラリティ FUEL CELLではついに広々とした室内空間を確保することに成功し、乗車定員も「5名」となりました。トヨタ・MIRAIの定員は4名なので、これは大きなアドバンテージですね。

クラリティ FUEL CELLに搭載されるモーターは、最高出力130kW(177ps)、最大トルク330Nm(30.6kgf・m)と、従来モデルに比べ30パーセントの出力向上と、17パーセントのトルク向上を実現。特に、さらに太くなったトルクは、1,890kgと決して軽くはないクラリティ FUEL CELLをしっかりと力強く加速させます。

クラリティ FUEL CELLは、前後の重量バランスが良いこともあり、しっかりとしたハンドリングと優れた乗り心地、そしてモーター駆動ならではの静粛性を実現。5人乗車で移動するサルーンとしての性能をきちんと満たしています。特に、今までの電気自動車や燃料電池自動車の常識を覆す広々としたキャビンは、ドライバーだけでなく同乗者にも喜ばれるでしょう。

一回の水素の充填にかかる時間は約3分から5分。水素5kgを充填してかかる費用は1kg1000円から1100円なので、満タンで5000円から5500円ほど。満タン状態で、メーカー公表値約750km、とある実走行データで590km前後走行できます。ただし、現在の水素ステーションの数は2018年3月現在で100箇所と、未だ一箇所も整備されていない県も多く、インフラ整備が完璧とは言えない状況です。

シンプルで上質、快適なインテリア

クラリティ FUEL CELLのボディサイズは、全長4,915mm、全幅1,875mm、全高1,480mmとかなり大柄。かつてのシトロエンを思わせる空力ボディは、燃費の向上に一役買っています。未来的でインパクトのある外観に比べると、インテリアはシンプルでクリーンな印象でまとめられています。

大柄でがっしりとした作りの良いシートは、メイン部分が本革、サイド部分がプライムスムースという素材でできています。プライムスムースは汚れやシワに強い機能性を備えながら、質感はしっとりとしていて、見た目にも高級感のある上質な素材となっています。

トランクルームは水素タンクが張り出しているせいでフラットではないものの、ゴルフバッグ3つを積みこめる容量を確保。大人5人が移動するためのセダンとして、十分な積載能力を持っています。

また、室内空間を常に快適な状態に保つ「トータルエアクオリティマネージメント」というコンセプトを導入。空気浄化や脱臭などの効果があるプラズマクラスター技術搭載エアコン、外気中の排気ガスなどを検知して自動的に内気循環に切り替えるエアクオリティーセンサー、アレルゲンの活動を抑制するアレルフリー高性能脱臭フィルターなどを装備し、室内の空気をいつも快適な状態に保ちます。

残念ながらリースのみ

冒頭で「クラリティ FUEL CELLの抱える特殊な事情」と書きましたが、それはズバリ「クラリティ FUEL CELLはリース販売のみ」。一般的な売り切り形態では、今はまだ購入することができないのです。ホンダ側の理由としては「市場における使用実態やメンテナンスの対応を確実に行うため」としていて、もしリースを希望する場合は、直接Hondaお客様相談センターに電話するようになっています。

実際の取り扱いに関しては、水素ステーションが設置されている都道府県の、ある特定のHonda Carsで行なっているようです。公式ウェブサイトを見ても、具体的にどこの店舗で取り扱っているかは公表されていません。

クルマの完成度を見るかぎり、早々に一般発売を開始して、一般のユーザーからの「声」を集めた方がクルマの進化のためには良さそうなのですが、トヨタ・MIRAIと無理やりライバル関係としないあたり、ホンダの冷静さをうかがわせます。

クラリティシリーズの先進性

ホンダは、クラリティシリーズで電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車と3種類のパワーユニットを揃えましたが、どの駆動方式が次世代のスタンダードになると考えているのでしょうか。全固体電池が実用化されれば電気自動車、商用水素ステーションの数が増えれば燃料電池自動車、それまでのつなぎとなるプラグインハイブリッド車、といった風に、今のところ「これで決定的!」となるような駆動方式はなく、しばらくは各タイプとも共存して生産されていくことになるでしょう。

そうした中で、クラリティシリーズの先進性は、これからますます注目されていくに違いありません。燃料電池自動車であるクラリティ FUEL CELLの一般発売についても、ぜひ期待したいですね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

[ライター/守屋健]