「羊の皮を被った狼」という言葉がこれほど合うクルマもないのでは?日産・スカイラインGT-Rセダンの魅力に迫る

みなさん、こんにちは!日産の最上級スポーツモデルの称号「GT-R」がスカイラインから離れて久しいですが、中古車市場を見る限り、「スカイラインGT-R」のネームバリューは失われるどころか、年々増していっているように感じます。中古車価格も年々高騰し、さらに欧米からの再評価の波もきている現状、近いうちに中古車価格が下がる可能性はほとんどないと言えるでしょう。

その中でも、さらに希少な存在として注目されているのが、「スカイラインGT-Rセダン」です。もともとスカイラインGT-Rの初代モデルは4ドアセダンとして登場していますが、現在この表記を用いる場合はR33型に用意された限定車を示すことが多いかもしれません。今回は、初代GT-Rにも触れつつ、R33型のスカイラインGT-Rセダンを中心に紹介していきます。

初代モデルの前期型が生産されたのはわずか1年間


出典元:ウィキメディア

スカイラインGT-Rが初めて登場したのは1969年。日産と合併する前、プリンス自動車はスカイライン2000GT-B(S54B-II型)でツーリングカーレースに参戦していました。その後継車として、新型のスカイライン2000GTに、プロトタイプレーシングカーであるプリンスR380のエンジンをベースに新規開発したエンジンを搭載した「スカイラインGTレーシング仕様」を1968年の東京モーターショーに発表します。

プリンス自動車と日産が合併後、このGTレーシング仕様がほぼそのまま市販されてしまったのが、初代スカイラインGT-R(PGC10型)です。R380に搭載された純レーシングエンジン・GR8型を公道でも使えるようにデチューンし、再設計とリファインが行われた「S20型」をフロントに納め、4ドアボディを持つ初代スカイラインGT-Rは、後期型で2ドアハードトップボディとなるまでの1年間にわずか832台のみが生産されました。

「S20型」はデチューンされていたとはいえ、当時としては非常に高度なDOHC4バルブのメカニズムを持つ2リッターの直列6気筒エンジンで、標準で160psを発揮。カムシャフトとキャブレター交換だけで200psに達し、後期ワークスマシンに関しては250〜260psを発生したと言われるほど、高度なチューニングに耐える頑丈なエンジンでした。組み立ても熟練工によって手で行われ、一日あたりの生産台数はわずか4台と、当時の技術の粋を集結した特別なユニットだったのです。

参考:スカイラインGT-Rセダンの買取専門ページ!

東京モーターショーで出展され、大きな話題に


出典元:ウィキメディア

初代モデルの前期型が生産終えてしばらくの間、スカイラインGT-Rに4ドアボディが設定されることはありませんでした。しかし、スカイラインの生誕40周年を記念するモデルとして、突如スカイラインGT-Rの4ドアモデルが再び登場します。

正式名称は、「日産・スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」。通称「スカイラインGT-Rセダン」と呼ばれるこのクルマは、1997年10月開催の第32回東京モーターショーで出展され、大きな話題を呼びました。スカイライン、そしてGT-Rの原点とも言える「4ドアのスカイラインGT-R」の登場は、多くのファン憧れの存在となったのです。その後、日産の特装車などを手がけるオーテックの手により、注文生産の特別仕様車として市販されることになります。

スカイライン40周年記念モデルとしてモデル末期に登場


出展:ウィキメディア

正式に販売になったのは1998年1月のこと。R33型スカイラインGT-Rの販売期間は短く、1995年1月から1998年12月までですから、スカイラインGT-RセダンはR33型のほぼモデル末期に登場したモデルということになります。価格はスカイラインGT-Rの標準車の488万5千円に対し、498万5千円という、製作コストを考慮すると大バーゲンとも言える値段に設定されていました。ちなみに最上級グレードであるVスペックは539万円。日産とオーテックによる、スカイラインGT-Rファンへのギフトと言っていいのかもしれませんね。

注文生産という方式が取られたため、最終的な生産台数は非常に少なく、わずかに442台が生産されたに過ぎません。また、とても数は少ないですが、警察車両としても導入されており、神奈川県警の高速道路交通警察隊が白黒パトカーとして2台、埼玉県警が覆面パトカーとして2台採用しています。

この生産台数の少なさが中古車の個体数と価格にダイレクトに反映されていて、2019年10月現在流通している台数は5台前後、価格は550万円から600万円以上が相場とされています。オーナーが大事に維持している車両が多いこと、現在でも探し続けている人が多いことなどから、今後も価格の高騰は続くと考えてよいでしょう。これから手に入れたい、と考えている方は、ショップ探しも含めてじっくり時間をかけるしかなさそうです。

オーテックによる渾身のスペシャルモデル

「スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」の成り立ちはかなり複雑です。名機・RB26DETTエンジンと5速マニュアルトランスミッション、ATTESA ET-S搭載の4WDなどのシャーシは2ドアのスカイラインGT-Rから受け継がれ、フロントドア、リアのトランクリッド、ルーフは4ドアのスカイラインから、そしてリアのドア、リアフェンダーはわざわざこのモデルのために新たに設計され、プレス金型も新規に作られるなど、非常にコストと手間がかけられたスペシャルモデルとなっていました。

リアのドアとリアフェンダーを新設計とした理由は、スカイラインGT-Rの大きな特徴であるブリスターフェンダーを4ドアでも再現するためでした。大雑把に表現すれば、2ドアのスカイラインGT-Rのリアセクションを新たに作り直したモデル、ということもできるでしょう。そのため、形式名は、2ドアのスカイラインGT-Rの「BCNR33」に対し、スカイラインGT-Rセダンは「BCNR33改」となっています。

搭載されているテクノロジーやパーツは、ベースとなった2ドアのスカイラインGT-Rと同等になっており、非常に高い走行性能を実現しています。先代のR32型スカイラインGT-Rでは上級グレードのVスペック系統にしか装備されなかったブレンボ製ブレーキキャリパーも、R33型では標準装備となり、もちろんスカイラインGT-Rセダンにも装着されました。

搭載されるエンジンは、R32型に引き続き「RB26DETT型」です。レースでの使用を前提として開発されたこのエンジンは、非常に高いチューニング耐性を持つことで知られていて、このあたりも「S20型」を搭載していた初代スカイラインGT-Rのよき伝統を受け継いでいると言えるでしょう。2.6リッター直列6気筒DOHCツインターボという形式はR32型から変更ありませんが、増加した車重に対応して、ECUの変更やターボ過給圧の上昇、圧縮比の向上、吸排気系の見直しなどのリファインにより、先代モデルよりトルクが1.5kgm増しの、最高出力280ps/6800rpm、最大トルク37.5kgm/4400rpmというスペックとなっています。

弩級の性能と、それを感じさせないさりげなさと


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この頃の国産スポーツモデルの特徴として、自主規制である280psにするために、マフラーやリミッターなどで出力を抑えている、ということが挙げられます。スカイラインGT-Rセダンに搭載されたRB26DETT型も例外ではなく、マフラーの交換とパワーリミッターの解除で簡単に400psオーバーの出力を得ることが可能でした。これだけの高出力を得られるセダンモデルは当時世界的に見てもかなり珍しく、スカイラインGT-Rセダンは「どうしても4ドアが必要、でもGT-Rの高性能も欲しい」というドライバーにとって、夢のような存在だったのです。

2ドアのスカイラインGT-Rには、角度調節機構付きリアスポイラーが装着されていましたが、スカイラインGT-Rセダンには目立つリアスポイラーは装着されず、スカイラインの4ドアモデル譲りのシンプルでクリーンな造形となっていました。リアライトやリア全体のデザインも4ドアモデルから引き継がれ、GT-Rのバッジがなければ気付けないほど、さりげなく、おとなしいデザインとなっています。

あらゆる点で、初代スカイラインGT-Rモデルに回帰したと言えるモデル、スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40th ANNIVERSARY。初代スカイラインGT-R(PGC10型)の生産台数は832台、スカイラインGT-Rセダン(BCNR33改)の生産台数は442台。合計で1500台にも届かないこれらの4ドアGT-Rは、これからもその希少性とこだわりの作り込みで、多くの人々を魅了していくことでしょう。

[ライター/守屋健]